以前のガイドでは、亜鉛ダイカストを幅広く取り上げました。今回は、最も一般的な亜鉛ダイカスト合金群であるZamakに焦点を当てます。Zamakはアルミニウム、マグネシウム、銅を含む亜鉛ベースの金属で、主に精密部品のダイカストに使用されます。本記事では、基本情報や特性、用途、材料選定時によくある疑問について解説します。
Zamak合金とは?

Zamakの歴史
Zamakは、亀裂や膨張の原因となる不純物によって従来の亜鉛鋳造で生じていた不具合を防ぐため、New Jersey Zinc Companyによって1929年に開発されました。名称の「Zamak」(地域によっては「zamac」と表記)は、含有金属のドイツ語名に由来します。zink(亜鉛)、アルミニウム、マグネシウム、そしてkupfer(銅)です。
ヨーロッパでは、技術規格で「EN Zamak」という用語がよく使われます。これらの規格によって、供給元や国を問わずZamak合金の品質が統一され、亜鉛合金鋳造部品への信頼が高まりました。
Zamak合金の種類:組成とグレード
Zamakダイカストに使われる合金は主に亜鉛で構成され、アルミニウム含有量は約4%に固定されています。強度、硬度、鋳造性を調整するため、少量のマグネシウムと銅も含まれます。
代表的なZamakのグレードには、Zamak 2、3、5、7があります。Zamak 3は強度、安定性、表面品質のバランスに優れ、最も広く使用されています。Zamak 5は銅の含有量を増やして強度を高めたグレード、Zamak 2は最も高い強度を備える一方、柔軟性は低めです。Zamak 7はZamak 3の高純度タイプで、マグネシウムや不純物の含有量がさらに少なくなっています。
| グレード | 主な特長 | 主な用途 |
|---|---|---|
| Zamak 3 | 特性のバランスに優れる | 一般的なダイカスト |
| Zamak 5 | 高強度 | 荷重を受ける部品 |
| Zamak 2 | 最高強度 | 工具・金型 |
| Zamak 7 | 高い流動性、耐食性 | 薄肉・装飾部品 |
他の亜鉛合金との比較
Zamakは幅広い亜鉛合金の一種ですが、他の亜鉛アルミニウム合金とは異なります。アルミニウム含有量が一定であるのに対し、ZA合金は、より多くのアルミニウムを含みます。
組成が安定しているため、Zamakはホットチャンバーマシンで鋳造しやすい素材です。また、収縮を抑えて寸法精度を高めます。この一貫性は、多くの亜鉛ベース合金では実現できません。
他の亜鉛合金と比べ、Zamakは表面仕上げに優れ、加工も容易です。厳しい公差や薄肉形状が求められ、安定しためっき品質が必要な部品に選ばれています。
機械的・物理的特性
Zamak合金は、適度な強度、優れた延性、安定した物理的挙動を兼ね備えています。そのため、寸法や表面品質の一貫性と、予測可能な性能が求められる精密ダイカスト部品に適しています。
強度と硬度
Zamak合金は、亜鉛ベースの材料として優れた機械的特性を備えています。
- 引張強さ(破断するまで耐えられる引張力):グレードや銅含有量によって異なり、約250~360 MPaです。
- 降伏強さ(元の形に戻らず、永久変形が始まる点):通常は190~300 MPaで、一定の荷重がかかる部品にも対応できます。
これらの強度は、もちろん鋼には及びませんが、プラスチックを上回り、他のアルミニウム鋳造合金に対しても競争力があります。
銅の含有量が増えるほど硬度も高くなります。Zamak 5やZamak 2などのグレードは、Zamak 3より硬度が高く、耐摩耗性にも優れています。
強度重量比はアルミニウムより低いものの、特に銅含有量の高いグレードでは、常温での使用において優れたクリープ耐性を発揮します。
延性と伸び
Zamakの延性はグレードによって大きく異なります。伸び(破断するまでに伸びる量)は、銅含有量の高い合金で約2%、Zamak 7のような延性に優れたグレードで10~12%です。
延性が高いと、鋳造時に薄肉部まで合金がきれいに行き渡ります。また、鋭角部やエジェクタ跡の周辺で亀裂が生じにくくなります。この点では、通常、銅含有量の低いグレードが優れています。
一方、延性が低い材料は柔軟性と引き換えに強度を高め、荷重による変形に耐えやすくなりますが、曲げには弱くなります。
密度と比熱
Zamak合金の密度は、およそ6.6~6.8 g/cm³です。密度の高さによって部品にしっかりとした質感が生まれ、振動減衰性も向上しますが、アルミニウム合金より重くなります。
Zamakの比熱(材料の温度を上げるために必要なエネルギーの指標)は、アルミニウムより低い値です。そのため、ダイカスト中に部品がすばやく加熱・冷却されます。
密度が高いと、輸送時の重量や可動部品の慣性にも影響します。表面仕上げや形状の細かさ、寸法精度がより重要な場合、設計者はこの点を許容することがよくあります。
熱伝導性と電気伝導性
Zamakの熱伝導性は中程度で、アルミニウムより低いものの、多くの鋼より高い値です。鋳造中に熱が均等に広がるため、局所的な高温や内部応力を抑えられます。
一方、電気伝導性は銅やアルミニウムに比べて低いため、電流を流す部品にはほとんど使われません。
融点が低く、熱の流れが安定しているため、金型を保護できます。また、複雑な形状全体での熱衝撃や冷却ムラを抑えることで、表面品質も向上します。
寸法安定性、切削性、表面仕上げ
Zamak合金は、長期間にわたって優れた寸法安定性を保ちます。反りや寸法変化が起きにくく、精密な組立部品に適しています。
また、切削性にも優れています。きれいに切削でき、滑らかなエッジに仕上がるうえ、工具の摩耗も少なく抑えられます。鋳造後の機械加工がほとんど、またはまったく不要な部品も多くあります。
寸法安定性に優れることで、めっきや仕上げの品質も向上します。均一な表面と安定した形状により、大量生産でも外観品質を保ちやすくなります。
Zamakの利点と制約
Zamak合金は、鋳造性に優れ、表面品質と寸法安定性も良好です。また、リサイクルしやすく、製造時のエネルギー消費を抑えられる一方、耐熱性や構造荷重への対応には制約があります。

Zamak合金の主な利点
前章では、Zamakの特性が鋳造工程にもたらす利点について説明しました。ここでは、要点を簡潔にまとめます。
構造用途や高温用途における制約
多くの利点がある一方、Zamakはあらゆるダイカストの課題を解決できるわけではありません。融点が低いため、高温環境での使用には制約があります。ほとんどのグレードは、長期間の使用で約100°Cを超えると性能が低下します。
また、この合金は大きな構造荷重に必要な強度を備えていません。フレームや荷重を受ける部品では、鋼やアルミニウムの代替にはなりません。熱が加わる状態で常に応力を受けると、クリープも発生します。
熱サイクルによって、寸法が徐々に変化することがあります。加熱と冷却を繰り返すと、時間の経過とともに厳しい公差の嵌合に影響する場合があります。エンジニアは、膨張と収縮を許容する設計にすることで、こうした影響を抑えることがよくあります。
表面処理によって耐性をある程度高めることはできますが、この合金は強い薬品や塩分に常時さらされる環境では、腐食しやすい傾向があります。
こうした制約があるため、材料選定と部品設計が重要になります。
Zamak合金の主な用途

自動車部品
自動車メーカーは、効率的なダイカスト工程と品質の安定性を活かし、公差精度が求められる小型から中型の自動車部品にZamakを使用しています。
さらに、Zamakは耐食性に優れ、日常的な摩耗にも強いため、内装部品やエンジンルーム内の部品に適しています。また、めっきやコーティングが可能で、外観や表面の保護性能を高められます。
Zamak製の代表的な自動車部品は次のとおりです。
| 部品の種類 | 主な用途 |
|---|---|
| ドアハンドル | 内装・外装トリム |
| ロックハウジング | セキュリティ・アクセスシステム |
| ブラケット | 取り付け・支持部品 |
| エンブレム | ブランド表示・トリムの装飾 |
消費財・電子機器
消費財メーカーは、強度、重量、滑らかな表面仕上げを備えたZamakを活用しています。この合金は、製品の外観を重視する部品に適した、研磨、塗装、めっき仕上げに対応します。
電子機器メーカーは、内部部品を保護するハウジングやフレームにZamakを使用しています。大幅に重量を増やすことなく剛性を高められます。また、ボタンやコネクター、位置合わせ部の組み立てに重要な高精度にも対応します。
消費財・電子機器での代表的な用途は次のとおりです。
- 家電製品のつまみ、ハンドル、ロック部品
- 化粧品容器の部品
- 小型機器の筐体
- 家具用金具
要点:プロジェクトに適したZamakの選び方
次の条件を重視するプロジェクトには、Zamakが適しています。
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小型から中型の精密部品を大量生産する。
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金型から取り出した直後から、優れた表面仕上げと寸法精度が得られる。
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短時間でエネルギー効率の高い製造サイクルを実現する。
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細部まで精密な薄肉形状を成形する。
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プラスチックやアルミニウムに代わる、コスト効率の高い材料を選ぶ。
材種の選定:
- Zamak 2:延性は低めですが、機械的強度と硬度に優れています。
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Zamak 3:多くの汎用用途で標準的に使用されます。
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Zamak 5:強度、硬度、耐摩耗性が向上しています。
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Zamak 7:複雑な薄肉部品に適した延性と流動性を備えています。
次の条件が必要なプロジェクトには、代替工法をご検討ください。
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アルミニウムダイカストまたは鋼材:非常に高い強度や、荷重を支える構造部品が必要な場合
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特殊亜鉛合金(ZA-8):高温環境(約100°C / 212°F超)で使用する場合
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マグネシウムダイカスト:可能な限り軽量化したい場合
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優れた電気伝導性が必要な場合は、銅合金またはアルミニウムダイカストを選びます。
上記の指針は選定の出発点となりますが、プロジェクトごとに要件は異なります。選択に迷う場合は、ダイカストの専門エンジニアリングチームに相談することをおすすめします。
最適な選択をしませんか?プロジェクトについて、ダイカストの専門家に今すぐお問い合わせください。
よくある質問
Zamak合金の主な構成成分は何ですか?
Zamak合金は亜鉛をベースとし、アルミニウム、マグネシウム、銅を少量加えています。
アルミニウムは強度を高め、鋳造時の金属の流動性を向上させます。マグネシウムは安定性を高め、銅は硬度と耐摩耗性を向上させます。
Zamakの融点は、他のダイカスト用金属と比べてどのくらいですか?
Zamakの融点は約380~390°Cです。これは、570°Cを超えるアルミニウムダイカスト合金よりも大幅に低い温度です。
融点が低いため、金型にかかる負荷を抑えられます。また、鋳造サイクルの短縮と金型寿命の延長にもつながります。
Zamak合金は屋外用途に使用できますか?
適切な保護仕上げを施せば、Zamakは屋外でも使用できます。めっき、塗装、粉体塗装によって湿気や腐食を防げます。ただし、未コーティングのZamakは、湿潤環境や塩分の多い環境では性能を発揮できません。屋外で使う場合は、適切な表面処理が重要です。
Zamak合金は、さまざまな仕上げ加工にどのように対応しますか?
鋳造面が滑らかなため、Zamakにはさまざまな仕上げ加工を施せます。代表的な方法には、クロムめっき、ニッケルめっき、塗装、粉体塗装があります。
この合金は、研磨やめっきの際にも細かな形状を保ちます。そのため、装飾部品や人目に触れる部品によく使われます。






