ダイカスト業界では、主にアルミニウム合金と亜鉛合金が使用されており、近年その活用が大きく広がっています。亜鉛とアルミニウムの違いを理解することは、用途に適した材料を選び、それぞれを効果的に活用するうえで重要です。
この記事では、亜鉛とアルミニウムを区別する主な特性を掘り下げ、それぞれの性質や用途、実用上の検討事項について解説します。
亜鉛とアルミニウムとは?
亜鉛とアルミニウムは、それぞれ独自の特性を持つ異なる金属です。亜鉛は柔らかく、銀白色の金属で、鋼材の防食めっきやダイカスト、真ちゅうの製造など、さまざまな分野で利用されています。
アルミニウムは軽量で丈夫な金属です。航空機の製造、飲料缶、窓枠など、幅広い用途に使われています。
亜鉛とアルミニウムを組み合わせると、特性の異なるさまざまな合金を作ることができます。
亜鉛合金とは?
亜鉛合金とは、主成分の亜鉛にほかの金属元素を加えた合金です。亜鉛合金に一般的に用いられる元素には、アルミニウム、マグネシウム、銅、カドミウム、鉛、チタンのほか、低融点の亜鉛系合金に使われる元素などがあります。各成分を溶かし、ダイカストなどの加圧成形法で加工することで、目的の形状に仕上げます。

亜鉛合金は、製造方法に応じて鋳造合金と展伸合金に分類されます。計測機器や自動車部品のダイカストのほか、ボイラーの水冷壁管に高温腐食への耐性を持たせる溶融亜鉛めっき処理など、幅広い産業で利用されています。
亜鉛合金の特長
- 鋳造性に優れ、複雑な形状や薄肉の精密部品も、滑らかな表面に仕上げて製造できます。
- 電気めっき、スプレー塗装、塗装、研磨、研削など、さまざまな表面処理に対応します。
- 溶解・ダイカスト工程で鉄を吸収しにくく、耐圧腐食性に優れ、金型にも付着しません。
- 機械的性質に優れ、常温で耐摩耗性を発揮します。
- 融点が385℃と低く、ダイカストに適しています。
アルミニウム合金とは?
アルミニウム合金とは、アルミニウムをベースとする合金の総称です。銅、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、マンガンなどの主要合金元素に加え、ニッケル、鉄、チタン、クロム、リチウムなどの副合金元素を含みます。

アルミニウム合金は、鋼より密度が低い材料です。一般的に強度は鋼のほうが高いものの、アルミニウムの軽さを考慮すると、比強度ではアルミニウムが優れています。アルミニウム合金の中には鋼より強度の高いものもあります。塑性加工性に優れ、さまざまな形状の形材に加工できるため、幅広い産業で使われる非鉄金属の構造材料です。航空、宇宙、自動車製造、機械製造、造船、化学工業など、用途は多岐にわたります。
アルミニウム合金の特長
- 軽量で、軽量化が重要となる産業に最適です。
- 熱伝導性に優れています。
- 環境に配慮した組成です。
- 低温環境に強い特性があります。
- 熱処理により、優れた機械的性質や物理的特性、耐食性を実現できます。
- 高い強度を備えています。
亜鉛合金とアルミニウム合金の違い
材料
亜鉛合金は比重が大きく、鋳造性に優れています。密度と強度が高く、高品質の鋼材に匹敵する、あるいはそれを上回る場合もあります。そのため、亜鉛合金のダイカスト部品は、アルミニウム合金のダイカスト部品より重くなるのが一般的です。
特性
亜鉛合金は融点が低く、機械的性質や耐摩耗性に優れ、表面処理にも適しています。一方、アルミニウム合金は電気伝導性、熱伝導性、耐食性に優れています。
ダイカスト工程
亜鉛合金とアルミニウム合金では融点が異なり、亜鉛合金のほうが低融点です。この違いにより、ダイカストでは専用の加工設備や条件が必要になります。
亜鉛合金のダイカストには、一般にホットチャンバー式ダイカストマシンを使用します。機械内で亜鉛合金を溶解するため、サイクルタイムを短縮できます。

対して、アルミニウム合金のダイカストではコールドチャンバー式ダイカストマシンを使用します。アルミニウム合金を機械の外で溶かしてから射出装置に注入するため、ホットチャンバー式より時間がかかります。
亜鉛合金とアルミニウム合金のダイカストでは、加工設備や条件が異なるため、完成品の特性にも違いが生じます。亜鉛合金の鋳物は、一般にアルミニウム合金の鋳物より耐久性と耐食性に優れています。一方、アルミニウム合金の鋳物は軽量で、熱伝導性にも優れています。
重量
一般に、亜鉛合金はアルミニウムより密度が高く、重い材料です。純亜鉛の密度は5g/cm3で、アルミニウムの2.7g/cm3より高くなっています。この高い密度により、亜鉛合金はアルミニウム部品より優れた耐衝撃性を発揮するため、構造用途の鋳物製造に適した材料です。
特性
ここでは、両方のダイカスト材料に共通する特性と、その違いを紹介します。
- 融点
亜鉛はアルミニウムより融点が低く、約420°Cです。融点は鋳造方法の選択に影響する、ダイカストの重要な要素です。亜鉛は融点が低いため、ホットチャンバー方式に適しています。
この特性により、生産コストの削減、生産効率の向上、金型劣化リスクの低減といった利点が得られます。一方、アルミニウムは融点が約660°Cと高いため、コールドチャンバー方式に適しています。
- 熱伝導性
亜鉛合金は、アルミニウムのダイカスト材より熱伝導性に優れています。熱を効率よく吸収・放散するため、発熱量が多い用途や放熱が求められる用途に適しています。特に、ヒートシンクや電子機器の部品製造に有用です。
- 耐食性
亜鉛鋳物は優れた耐食性を持ち、アルミニウムダイカスト部品を上回ります。この特性から、防食が欠かせない過酷な環境でのプロジェクトには、亜鉛がより適しています。
表面仕上げ
CNC加工部品とは異なり、ダイカスト部品では通常、二次的な表面仕上げ処理が必要です。表面仕上げの要否は、鋳造方法や使用材料の種類によって異なります。
亜鉛鋳造品は気孔がないため、鋳造後の表面がより滑らかで、模様も均一です。一方、アルミニウム鋳造品は鋳造時に気孔やピット、ブリスターが生じることがあり、それを補うための表面仕上げが必要になります。
亜鉛鋳造品とアルミニウム鋳造品は、どちらも表面仕上げ加工によって品質を高められます。ただし亜鉛は、めっき、粉体塗装、塗装、電気めっき、陽極酸化など、より幅広い表面仕上げに適しています。
金型寿命
亜鉛ダイカストで使用する金型は、亜鉛の研磨性が低く、融点も低いため、高い引張強度を必要としません。そのため金型の損傷が少なく、金型コストも抑えられます。結果として、亜鉛鋳造用の金型は交換までに1,000,000ショット以上に耐えられる一方、アルミニウム鋳造用の金型の寿命は通常約100,000ショットです。
用途
亜鉛鋳造品とアルミニウム鋳造品は、どちらもさまざまな業界で使用されています。強度に優れる亜鉛鋳造は、家電製品や自動車部品のダイカストで広く選ばれています。
一方、アルミニウム鋳造は強度と重量のバランスに優れており、軽量でありながら堅牢な部品の製造に適しています。この特性から、軽量素材が不可欠な航空宇宙産業で、アルミニウム鋳造品は特に重宝されています。
サイクルタイム
アルミニウムダイカストと亜鉛ダイカストを比較する際、サイクルタイムは重要な要素です。亜鉛ダイカストは高圧かつ低融点で行われる点が、アルミニウムダイカストと異なります。そのため、亜鉛ダイカストのサイクルタイムは短く、通常、アルミニウム鋳造より150~200%高速です。
また、亜鉛ダイカストでは内部で加熱するのに対し、アルミニウムダイカストではコールドチャンバー方式を採用します。さらに、亜鉛は効率よく放熱するため、溶融金属の凝固が速くなり、サイクルタイムのさらなる短縮につながります。
コスト
ダイカストの製造コストは、材料の選択、製造工程、作業者の技術、サイクルタイム、表面仕上げなど、さまざまな要因によって変わります。亜鉛合金製のダイカスト品は価格が比較的安い一方、アルミニウム合金製のものに比べて強度と耐食性が低くなります。アルミニウムダイカスト品は強度と耐食性に優れますが、コストは高くなります。
製造工程では、金属を溶かして金型に注入し、冷却して最終部品を成形します。熟練した作業者の配置やサイクルタイムの短縮によって、コストを削減できます。また、塗装やめっきなどの表面仕上げも全体のコストに加算されます。一般に、亜鉛ダイカストはアルミニウムダイカストより費用対効果に優れています。
亜鉛ダイカストを選ぶべき理由と場面

亜鉛ダイカストとアルミニウムダイカストのどちらを選ぶか迷ったときは、亜鉛ダイカストが有力な選択肢となる次の要素を検討しましょう。
薄肉部品
亜鉛ダイカストは、ほかの材料に比べて強度が高いため、薄肉部品の製造に適しています。亜鉛は密度が高く、構造の完全性と安定性を保ちやすいため、材料の使用量とダイカストコストを削減できます。
過酷な環境条件
亜鉛ダイカストは、特に腐食が起こりやすい過酷な環境条件で優れた性能を発揮します。こうした環境にさらされると、部品の表面に保護層が形成され、優れた耐食性を発揮します。
残留応力の低減
ダイカストでは、溶融金属を金型に注入するために圧力をかけます。高圧ダイカストでは部品に残留応力が生じることがありますが、低圧ダイカストを利用する亜鉛ダイカストでは残留応力を抑えられます。
ダイカスト金型
繊細なダイカスト金型を使用する場合は、亜鉛ダイカストを選ぶのが有利です。亜鉛ダイカスト用の金型は、アルミニウムダイカスト用の金型に比べて約10倍長持ちします。
生産の高速化
亜鉛合金は融点が低いため、高圧で射出するホットチャンバー方式のダイカストが可能です。その結果、ほかの材料よりもサイクル速度が向上します。アルミニウムダイカストでは、作業者がアルミニウムを機械の外で溶かしてから射出機に注ぎますが、亜鉛ダイカストでは亜鉛を機械内で溶かします。
これらの要素を踏まえると、さまざまな用途で亜鉛ダイカストが有力な選択肢となります。
アルミニウムダイカストを選ぶべき理由と場面

アルミニウムと亜鉛のダイカスト部品のどちらを選ぶか検討する際、アルミニウムダイカストを優先すべき条件があります。次の要素を参考にしてください。
強度と重量の比
軽量で高い引張強度を求める場合は、アルミニウムダイカスト部品がおすすめです。これらの部品は、軽さと強度の両方を備えていることで知られています。特に航空宇宙産業では、軽量であることからアルミニウム製のダイカスト部品が広く使われています。
高い使用温度
融点が高く、高温に耐えられることから、アルミニウムダイカスト品は、冶金プロセスなど高い使用温度が求められる用途に適しています。この特性により、極端な熱にさらされても鋳造品の構造的・物理的特性が維持されます。
電気伝導性
優れた電気伝導性を持つアルミニウムダイカスト品は、さまざまな電子部品の製造に適しています。部品を電磁波から保護する必要があるEMIシールドなどの用途では、特に重要な特性です。
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まとめ
亜鉛とアルミニウムにはそれぞれ異なる特性があり、適した用途も異なります。亜鉛は高密度、耐食性、低融点が特長で、アルミニウムは軽量、高強度、優れた熱伝導性を備えています。こうした違いを理解することで、さまざまな業界やプロジェクトにおいて適切な材料を選択できます。
よくある質問
亜鉛ダイカストはアルミニウムダイカストより強度がありますか?
亜鉛ダイカスト部品は、アルミニウムダイカスト部品より高い強度を備えています。専門家によると、亜鉛ダイカストは一般的な非鉄合金のいくつかを上回る強度を持ちます。亜鉛合金の強度は、アルミニウムダイカストの2.5倍とされています。
アルミニウム鋳造と亜鉛鋳造の違いを生む要素は何ですか?
重量、耐食性、融点、熱伝導率が、2種類の鋳造品の違いを生み出します。亜鉛鋳造は、他方に比べて重量が大きく、融点が低く、耐食性と熱伝導率に優れているのが特徴です。
耐食性が高いのは亜鉛とアルミニウムのどちらですか?
アルミニウムのダイカスト部品は、亜鉛鋳造品より耐食性が低いものの、pH値によって異なる場合があります。たとえば、pH 11のアルカリ溶液では、アルミニウム鋳造品の耐食性は亜鉛鋳造品と同等です。






