硬質製品の製造に携わるスタートアップの多くは、射出成形によるプラスチック部品を中心にビジネスモデルを構築しています。しかし、必要なプラスチック部品の費用をまかなう資金の調達に苦労する企業も少なくありません。その原因として、この分野の企業が利用できる資金調達先についての知識不足が挙げられます。
この記事では、射出成形金型を活用するスタートアップが資金を調達するためのさまざまな方法を取り上げます。まず、射出成形金型とは何か、また企業がそれを使用するメリットについて説明します。次に、資金が必要となる理由や初期費用に影響する要因を解説し、最後に複数の資金調達先をご紹介します。
資金を調達できたら、賢く活用することが重要です。そこで、射出成形金型を活用するスタートアップのコストを抑える方法もいくつかご紹介します。
射出成形金型とは?
身近にある製品を見てみると、製造された硬質製品にはそれぞれ固有の形があるか、異なる形状の部品で構成されていることがわかります。身の回りの製品の形状は、その製造に使われる金型の種類によって決まります。
金型を用いて金属や非金属の製品をさまざまな形状に成形するには、プレス機に取り付ける高度な工具が必要です。この工具は圧力を加えて製品を成形します。完成部品の形状を決める工具を金型と呼びます。
金型は、大きくプラスチック用と非プラスチック用の2種類に分類されます。たとえば、自動車のボンネットなどの金属製ボディ部品の製造には、プラスチック用ではない金型を使用します。一方、プリンターの外装を作るには、プラスチック用の金型を使用します。
射出成形とは、金型を使ってプラスチック部品を製造する工程です。プラスチックなどの合成材料を融点まで加熱し、液状になった材料を金型に注入します。材料が冷えて固まると、必要な形状が完成します。
射出成形は、同一部品を大量に製造したい企業に適しています。プラスチック製品の製造で広く用いられる方法ですが、ゴム、ガラス、金属など、ほかの素材にも利用できます。

製造業のスタートアップが射出成形金型を必要とする理由
射出成形金型には、製造業のスタートアップにとって次のようなメリットがあります。
無限の可能性:射出成形を活用すれば、製造企業は複雑な形状の製品を作ることができ、可能性は無限に広がります。金型を用意すれば、材料を注入して必要な部品を成形するだけです。
時間の節約:CNC加工や手作業で何千、何百万もの製品を製造するには、膨大な時間がかかります。一方、射出成形なら、金型で形状を作るのは一度だけで、後続の部品はすべて同じ形に成形されるため、製造時間を短縮できます。
射出成形金型を活用するスタートアップに資金が必要な理由
スタートアップとは、事業の拡大が可能だと創業者が考える新しい企業を指します。こうした企業は、創業者だけでは手が届かない規模に成長することもよくあります。しかし、スタートアップは失敗率が高いことで知られており、事業に大きな不確実性が伴うことを示しています。
射出成形金型を活用する事業の立ち上げを計画しているなら、いくつかの課題に直面するでしょう。課題がなければ、誰でも簡単に起業できてしまいます。
予算の確保:金型を活用するスタートアップが直面する課題の多くは資金調達に関するものです。新製品の立ち上げでは、費用が急速に膨らむことがあります。
サプライヤーの要求への対応:射出成形を手がけるスタートアップでは、金型メーカーが最低発注数量を満たせる場合にのみ注文を受け付けることがよくあります。つまり、その最低数量分の発注資金を確保できなければ、メーカーに注文を受けてもらえません。
情報:新しい事業を始めると、情報が不足しがちです。業界では一般的な知識でも、創業したばかりの人にとってはそうとは限りません。必要な情報を持つ人から情報を得るには、費用がかかることもあります。業界の細かな事情に詳しいコンサルタントを雇い、支援を受ける必要があるかもしれません。

射出成形金型を活用するスタートアップのコストに影響する要因
資金調達先を探す前に、射出成形金型を活用するスタートアップの費用を把握しておきましょう。一般的に、次のようなコストを考慮する必要があります。
- 金型
- 材料
- 試作品の開発、設計、エンジニアリング
- 不動産
- 人材と研修
- ソフトウェア
- 法令遵守、健康、安全
- マーケティング
- 配送と倉庫保管
資金調達の方法
射出成形金型を活用する事業の立ち上げには多額の費用がかかることがわかったでしょう。しかし、起業への意欲があれば、実現できないわけではありません。ここでは、射出成形金型を活用するスタートアップが利用できる主な資金調達先をご紹介します。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、著名な投資家1、2人ではなく、多数の人々から資金を集める方法です。主に、融資型、寄付型、株式投資型、購入型の4種類があります。
それぞれの種類を詳しく見ていきましょう。
融資型:このタイプのクラウドファンディングでは、個人間融資を利用し、資金を提供した人々に返済する必要があります。資金を提供する人は通常、投資に対するリターンを期待しており、元本に利息を加えた形で支払われるのが一般的です。
寄付型:スタートアップに寄付する人は、そのアイデアを応援したいと考えています。寄付を受け取っても、見返りを提供する必要はありません。
株式投資型:このタイプのクラウドファンディングでは、参加者が射出成形金型を活用するスタートアップに資金を提供し、事業の持分を取得します。また、出資比率に応じて事業利益の一部を受け取ることも期待します。
購入型:このタイプの資金調達では、支援者がリターンを期待して資金を提供します。食事券やサービスの割引など、リターンはさまざまです。一般に、支援額が多いほどリターンも大きくなります。
では、射出成形金型を活用するスタートアップに出資してくれる人々を、どこで見つければよいのでしょうか。幸い、投資先を探す人々とスタートアップを結びつけるウェブサイトが数多くあります。たとえば、Kickstarter、Indiegogo、GoFundMe、そしてFundableがあります。
ベンチャーキャピタリストや投資家
ベンチャーキャピタリストや投資家は、成長の可能性がある事業に資金を投じます。ベンチャーキャピタルから資金調達する事業は、リスクが高い傾向にあります。しかし投資家は、挑戦する者に幸運が味方すると考え、事業が大きく成長すれば投資額が何倍にもなる可能性を理解しています。
スタートアップにとって、ベンチャーキャピタルの主なメリットは、事業が失敗した場合に資金提供者も損失を負うことです。そのため、失敗しても投資家への返済を心配する必要はありません。一方、事業が成功した場合、利益をすべて自分のものにはできないことも理解しておきましょう。
ベンチャーキャピタリストや投資家は投資を守るため、長年にわたって培ってきた組織運営や事業の知識を惜しみなく提供してくれます。彼らのビジネス上の人脈を活用することもできます。
銀行からの事業融資
事業融資は、スタートアップの資金調達方法として古くから利用されています。事業融資と聞いて、まず思い浮かぶ金融機関は銀行でしょう。
銀行融資には、エンジェル投資家やベンチャーキャピタリストからの資金調達で得られるようなメリットは通常ありませんが、独自の利点もあります。主なメリットの一つは、資金と引き換えに第三者へ事業の経営権を譲る必要がないことです。
事業融資の審査を受けることは、射出成形金型を活用するスタートアップにとって、最も難しい資金調達方法の一つです。銀行は損失を避けるため、借入金を返済できることを証明するよう厳しく求めます。そのため、申し込む前に、実績のあるビジネスモデルを確立しておく必要があります。
中小企業庁(SBA)の融資
スタートアップ向け融資は、新規事業が人材の採用、事業所の確保、運転資金、設備や備品の購入など、初期費用をまかなうために設計された融資制度です。
米国では、中小企業庁(SBA)の融資により、多くのスタートアップが事業資金を調達してきました。これらの融資は、政府以外の機関から創業資金を調達するのが難しい企業向けに設けられています。
SBAローンの利用対象は以下のとおりです。
- 正式に登録され、合法的に営業している営利企業。
- 米国またはその領土内で登録され、営業している企業。
- 事業主が資金と時間を投じ、自己資本を拠出している企業。
- ほかの貸し手からの融資を受ける手段を使い尽くしたことを証明できる企業。
SBAローンには、融資額が大きい、金利が低い、返済期間が長いといった利点があります。ただし、この種のローンを利用するには、必要額の20~30%を自己資金として用意し、事業を6か月以上継続している必要があります。

設備のリース
資金が足りない場合や家を購入したくない場合でも、他人の家を借りて住むという選択肢があります。同じように、射出成形を基盤とするスタートアップでも、設備を購入せずにリースすれば、そのメリットを活用できます。
通常、リースする設備は銀行または金融会社が所有しています。リース会社が、一定期間設備を使用するための料金を算出します。ただし、設備の所有権はリース元の会社にあります。
設備をリースすれば、ほかの起業準備に資金を充てられますが、リース料金をまかない、事業に利益をもたらすだけの収益が得られるかを確認することが重要です。そのため、リース会社と双方にメリットのある条件を交渉することが大切です。
起業家向けの地域支援プログラム
主流経済から取り残されている地域のスタートアップにとって、地域に根ざした起業は、事業資金を調達する現実的な方法です。地域内の資金提供者から支援を受けることで、価値観や人脈、資源を共有できる利点があります。そのような環境では、信頼も得やすくなります。
地域には、家族や友人、知人も含まれます。家族や友人に射出成形を基盤とする事業の立ち上げ資金がなくても、資金を提供してくれる人を知っているかもしれません。
自己資金
事業を始めるうえで、自己資金は重要です。ほとんどのスタートアップは自己資金で立ち上げられています。
政府の支援策、エンジェル投資家、ベンチャーキャピタリスト、銀行など、ほとんどの資金提供者は、融資先のスタートアップに自分自身も資金を投じる意思があることを示すよう求めます。事業主にリスクを負う意思がない事業に、自分のお金を投じたい人はいません。
射出成形を基盤とするスタートアップの費用を削減する
資金調達が済んだら、次は資金を無駄なく使うことが大切です。
3DHubs.comのウェブサイトでは、射出成形を基盤とするスタートアップの製造コストを削減するためのヒントが紹介されています。
- ストレートプル金型を使用しましょう。他の金型内機構を使うと、コストが15~30%増加する場合があります。
- 射出成形金型を再設計し、アンダーカットのある形状を避けましょう。生産速度が上がり、部品1個あたりの製造コストを抑えられます。
- 複数の部品を同じ金型に配置すると、生産時間を5分の1に短縮できる可能性があります。
- 金型の製作時間を増やす可能性があるため、文字などの小さく重要度の低いディテールは避けましょう。
- 見た目を重視しない部品には、高品質な仕上げを避けましょう。コスト増につながる場合があります。
- 部品の品質を損なわない範囲で、壁の厚みを薄くして部品の体積を減らしましょう。
- 少量生産の場合は、成形後に穴を開けるなど、製造工程の一部に二次加工を取り入れましょう。こうすれば、そうした加工を金型に組み込まずに済みます。
射出成形を基盤とするスタートアップ特有のコスト削減策に加え、無料ソフトウェアの利用、作業スペースの共有、値引きの交渉、正式な予算の作成、管理業務やマーケティング業務へのフリーランス人材の活用など、一般的な節約のコツも実践しましょう。








